
こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当です。
本稿では、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科とシステムデザイン・マネジメント研究科のカリキュラム、研究領域、指導体制、学生のキャリアパスなどを詳細に比較することで、皆様がご自身の興味関心、将来の目標に合致する研究科を選択するための羅針盤となることを目指します。
慶應義塾大学大学院が求める人材像:共通するDNA
両研究科の違いを掘り下げる前に、慶應義塾大学大学院全体として共有する人材育成の理念を確認しておきましょう。慶應義塾大学大学院は、以下の資質を持つ人材を求めています。
- 学際的な視野と探究心: 既存の専門分野の枠を超え、多様な視点から複雑な課題を捉え、本質的な解決策を探求する意欲。
- 問題発見・解決能力: 社会に潜在する課題を発見し、分析し、独創的な発想と論理的な思考に基づいた解決策を提案・実行する能力。
- 高度な専門性と実践力: 特定の専門分野における深い知識と、それを現実社会に応用するための実践的な能力。
- コミュニケーション能力と協調性: 多様な背景を持つ人々と円滑にコミュニケーションを取り、協働しながら研究を進める能力。
- 倫理観と責任感: 研究活動を通じて社会に貢献するという強い倫理観と責任感。
これらの共通のDNAを受け継ぎながら、両研究科はそれぞれの特色を色濃く打ち出しています。
政策・メディア研究科:社会変革の設計者
政策・メディア研究科(Graduate School of Media and Governance, GPM)は、情報技術の急速な発展と社会構造の変革がもたらす複雑な課題に対し、政策科学、情報科学、コミュニケーションといった多様な学問領域を融合させ、新たな解決策を探求する研究科です。
カリキュラムの特徴
政策・メディア研究科のカリキュラムは、広範な知識と深い専門性をバランス良く習得できるよう設計されています。
- 多様な専門分野: ジャーナリズム、メディアデザイン、コンテンツクリエイション、ソーシャルイノベーション、国際関係、公共政策、都市計画、データサイエンス、人工知能など、極めて多様な専門分野をカバーしています。
- 分野横断的な科目: 複数の専門分野を横断的に学ぶ科目が多く設置されており、複合的な視点から課題に取り組む力を養います。
- プロジェクトベースの学習: 実際の社会課題や研究テーマに基づいたプロジェクト型の授業が多く、実践的な問題解決能力を育成します。
- 高度な研究指導: 各分野の第一線で活躍する教員による、きめ細やかな研究指導を受けることができます。
研究領域の例
政策・メディア研究科における研究領域は非常に多岐にわたりますが、主な例として以下のようなものが挙げられます。
- グローバルガバナンスとリージョナルストラテジー: 政治、社会、法律、組織、公共政策、外交、国際関係、安全保障、地域戦略、地政学、エネルギー、言語、文化、情報、コミュニケーション、ヒューマンセキュリティ、サイバーセキュリティ、宗教、社会関係資本、歴史、思想
- ヒューマニティーズとコミュニケーション: 政治、社会、言語コミュニケーション、都市・地域政策、コミュニティ政策、言語、言語政策、表現、教育、芸術、多文化主義、異文化理解、移民、歴史、ナショナリズム、多言語/複言語教育
- 政策形成とソーシャルイノベーション: 政策、制度、経済、政治、社会、組織、企業、NPO / NGO、コミュニティ、ガバナンス、アントレプレナーシップ、経営戦略、マーケティング、ファイナンス、意思決定、教育、保健医療福祉、ヒューマンサービス、メディア、コミュニケーション、情報システム、社会イノベーション
- 環境デザイン・ガバナンス: 環境政策、都市・地域政策、居住・コミュニティ政策、地球環境テクノロジー、エコロジー・ランドスケープ、建築・都市デザイン、都市防災、気候変動、防災、人間工学、空間・コミュニケーションデザイン、地球環境、GIS、住環境デザイン、建築遺産、資源マネジメント、空間知能化、仮想デザイン、エネルギー、新興技術と政策
- エクス・デザイン: 音楽、芸術、神経科学、認知科学、心理学、文化的進化、幾何学、地図学、建築、建築設計、定性的調査法、コミュニケーション論、メディア論、デザイン工学、デジタルヒューマニティーズ、メディアアート、ヴィジュアライゼーション、3D/4Dプリンティング、スマートマテリアル、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、アルゴリズミックデザイン、ランドスケープアーキテクチュア、UI/UX
- サイバーインフォマティクス:コンピュータサイエンス、コンピュータネットワーク、情報セキュリティ、ユビキタスコンピューティング、データプラットフォーム、サイバーフィジカルシステム、ポストシリコンコンピューティング、量子コンピュータ、ソーシャルロボティクス、無線通信、ユーザインターフェース、ヘルスサイエンス、データベース、機械学習、数学
- 認知・意味編成モデルと身体スキル:精神医学、臨床心理学、神経科学、認知科学、計測工学、感性工学、バイオメカニクス、人間工学、言語学、異文化コミュニケーション、音楽、スポーツ科学、リハビリテーション、ライフデザイン、脳情報学、心理物理学、数理心理学、知覚情報処理、外国語教育学、認知心理学、発達心理学、教育心理学、学習科学、コミュニケーション学、創造性、学び、教育、精神分析
- 先端生命科学:環境バイオ、バイオ医科学、ゲノム科学、システム生物学、バイオインフォマティクス、医学、薬学、農学、理工学、DNA、メタボローム、プロテオーム、代謝システム、がん、微生物、食品、細胞
目指す人材像とキャリアパス
政策・メディア研究科は、既存の枠組みにとらわれず、多様な専門知識と創造的な発想を駆使して社会の変革を牽引 し、実現するリーダーシップを持つ人材の育成を目指しています。修了生のキャリアパスは多岐にわたり、以下のような分野で活躍しています。
- メディア・エンターテインメント: ジャーナリスト、プロデューサー、ディレクター、ゲームクリエイター、ウェブデザイナーなど。
- IT・情報通信: データサイエンティスト、AIエンジニア、サイバーセキュリティ専門家、ウェブサービス開発者など。
- コンサルティング・シンクタンク: 政策コンサルタント、経営コンサルタント、研究員など。
- 官公庁・国際機関: 政策立案担当者、国際協力専門家など。
- 起業・NPO: ソーシャルアントレプレナー、NPO/NGOスタッフなど。
- 研究・教育: 大学教員、研究者など。
システムデザイン・マネジメント研究科:複雑システムの価値創造者
一方、システムデザイン・マネジメント研究科(Graduate School of System Design and Management, SDM)は、社会や企業の複雑なシステムを対象に、人間中心のデザイン思考とシステムズエンジニアリングの手法を統合し、価値創造と問題解決を目指す研究科です。
カリキュラムの概要
システムデザイン・マネジメント研究科のカリキュラムは、複雑なシステムを理解し、設計し、管理するための体系的な知識とスキルを習得できるよう構成されています。
具体的な科目分野および授業科目名は以下のとおりです。
詳細は慶應義塾大学の公式サイトをお確かめください。
- 1.コア科目(必修科目)
- 「システムデザイン・マネジメント序論」「システムアーキテクティングとインテグレーション」「システムベリフィケーションとバリデーション」「プロジェクトマネジメント」
- 2. 専門科目
- 幅広い科目(日本語約35科目、英語約20科目)を用意。 専門科目は、「推奨基礎科目」「推奨俯瞰科目」と一般の専門科目に分け、学びやすいカリキュラムとなっています。
- 3.プロジェクト科目「デザインプロジェクト」(必修科目)
- 海外大学との連携または、国内の官公庁や企業との連携のもと行う通年科目(期間:5月~11月)です。
- 4.特別研究科目「システムデザイン・マネジメント研究(修士論文指導)」(必修科目)
- SDMの修士課程での研究は、一般の理科系大学院とは異なり、デザインプロジェクト研究を指向しています。本科目では、グループで行ったデザインプロジェクト研究のうち、自分の行った部分をまとめ、修士論文審査会でその内容について発表し審査を受けます。
- 5.自由科目
- 指導教員が研究上有益と認めた場合、慶應義塾内の他研究科・学部・諸研究所に設置された科目の一部を履修することができます。
目指す人材像とキャリアパス
システムデザイン・マネジメント研究科は、複雑なシステムを俯瞰的に理解し、人間中心のデザイン思考とシステムズエンジニアリングの手法を統合することで、新たな価値を創造し、社会の課題を解決できるシステムアーキテクト、プロジェクトマネージャー、イノベーターの育成を目指しています。修了生のキャリアパスは、以下のような分野で広がっています。
- メーカー(自動車、航空宇宙、電機など): 製品開発、システムエンジニア、プロジェクトマネージャーなど。
- IT・情報通信: システムインテグレーター、ソフトウェア開発、コンサルタントなど。
- コンサルティングファーム: 経営コンサルタント、ITコンサルタント、戦略コンサルタントなど。
- 金融機関: 金融商品開発、リスク管理、システム開発など。
- 官公庁・研究機関: システム設計、政策立案、研究開発など。
- 起業: テクノロジーを活用したスタートアップ企業の創業者など。
徹底比較:政策・メディア研究科とシステムデザイン・マネジメント研究科、何が違うのか?
ここまで、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科とシステムデザイン・マネジメント研究科それぞれの特徴を見てきましたが、改めて両研究科の違いを以下の表にまとめます。
項目 | 政策・メディア研究科 | システムデザイン・マネジメント研究科 |
主な焦点 | 社会の出来事、情報の伝え方、新しいコンテンツ作り、社会の仕組みづくりなど | 複雑な仕組み(社会の仕組み、企業の仕組みなど)の設計・管理、新しい価値の創造、問題解決 |
主要な学び | 政策の科学、情報の科学、デザイン、コミュニケーション、社会の学問、国際関係など | システムを設計する学問、デザイン思考、プロジェクトを管理する学問、リスクを管理する学問など |
研究の進め方 | いろいろな学問を組み合わせる、社会調査をする、メディアを分析する、デザインを実践する、政策を分析するなど | システム全体を良くする、人を中心に設計する、モデルを使って開発する、シミュレーションするなど |
特に大切にする考え方 | 社会を変える力、情報を伝える力、新しいものを生み出す力、色々な価値観を理解すること | うまく動くこと、効率が良いこと、安全であること、使いやすいこと、長く続くこと |
目指す人物像 | 社会の仕組みをデザインする人、メディアで新しいことをする人、政策を引っ張るリーダー | 複雑な仕組みで新しい価値を作る人、システム全体の設計者、プロジェクトをまとめるリーダー |
卒業後の進路の例 | ジャーナリスト、プロデューサー、政策コンサルタント、データサイエンティスト、起業家など | 製品開発エンジニア、システムインテグレーター、プロジェクトマネージャー、コンサルタントなど |
この表からわかるように、政策・メディア研究科とシステムデザイン・マネジメント研究科は、学際性を重視する点が共通しているものの、問題へのアプローチ、主要な学問領域、そして目指すキャリアパスにおいて明確な違いがあります。
政策・メディア研究科 は、社会の動向を深く理解し、情報やメディアの力を活用して社会に変革を起こす人材、多様な視点から政策をデザインできる人材の育成に重点を置いています。
一方、システムデザイン・マネジメント研究科 は、複雑なシステムを科学的に分析し、人間中心のデザイン思考を用いて、より良い社会システムや産業システムを創造・実現できる人材の育成に重点を置いています。
あなたはどちらの研究科に向いているか?自己分析のヒント
どちらの研究科がご自身に向いているかを判断するためには、以下の点を考慮して自己分析を深めることが重要です。
- 興味関心の対象: あなたが最も関心を持っている社会現象、技術、課題は何でしょうか?情報、メディア、政策、文化、社会構造、あるいは具体的な製品やシステムでしょうか?
- 得意なこと・強み: あなたはどのようなスキルや能力に自信がありますか?文章表現、コミュニケーション、データ分析、デザイン、論理的思考、システム構築、問題解決など、自身の強みを客観的に把握しましょう。
- 将来の目標・キャリアパス: 将来、どのような分野で活躍したいですか?どのような仕事を通して社会に貢献したいですか?具体的なキャリアプランを描くことが、研究科選択の重要な指針となります。
- 研究テーマ: SFC大学院でどのような研究に取り組みたいですか?具体的な研究テーマをいくつか検討し、それぞれの研究科でそのテーマを深められる環境があるかを確認しましょう。
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科とシステムデザイン・マネジメント研究科のウェブサイトでは、各研究科の教員の研究テーマやシラバス、修了生のキャリアパスなどが詳しく紹介されています。
これらの情報を確認し、ご自身の興味関心と照らし合わせることが重要です。また、オープンキャンパスや研究室訪問などの機会を積極的に活用し、研究科の雰囲気や教員との対話を通じて理解を深めることも有益でしょう。
KOSSUN教育ラボのサポート体制
KOSSUN教育ラボでは、総合型選抜で SFC を目指す皆さんを総合的にサポートしています。
- SFCの入試情報提供: SFCのアドミッション・ポリシーや入試傾向、面接対策など、SFCの入試に関する情報を詳しく解説します。
- 書類作成指導: SFCの入試で課される志望理由書や自由記述などの書類作成を、個別に丁寧に指導します。
- 面接対策: SFCの面接官の視点に立った実践的な指導で、自信を持って面接に臨めるようにサポートします。
- 学習計画:一人ひとりに合わせた学習計画を作成します。
KOSSUN教育ラボで対応している対策の詳細は公式ホームページをお確かめください。
最後に
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科とシステムデザイン・マネジメント研究科は、それぞれ異なる魅力と特色を持つ研究科です。この記事を通して、それぞれの違いを理解し、ご自身に合った研究科を見つけるための一助となれば幸いです。
KOSSUN教育ラボは、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の総合型選抜(AO入試)に特化した対策を行っています。受験でお困りの方は、お気軽に無料個別相談会にお申し込みください。
※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人
西村 成道(にしむら・なるみち)
KOSSUN教育ラボ 副代表。総合型選抜(AO入試)のプロ講師として1,200名以上の塾生をサポート。特に書類選考の通過率は通算96.4%と業界トップを記録。慶應SFCをはじめ、「評定不良」「実績なし」「文章嫌い」からの逆転合格者を毎年輩出。圧倒的な指導力と実績が受験生、保護者の間で話題となり、全国から入塾希望者が殺到している。著書、メディア出演多数。