
こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当です。
「空間デザインを学びたいけれど、SFCでは一体何ができるのだろう?」 「建築士の資格は取れる?普通の建築学部と何が違う?」
最先端の学際的な学びを提供する慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)。その中で「空間デザイン」に興味を持つ受験生は少なくありません。
しかし、SFCには一般的な大学のような「建築学科」や「デザイン工学科」といった名前の専攻は存在しません。
この記事では、SFCにおける空間デザインの学びが、どのような考え方に基づき、どんな領域をカバーしているのかを、公式サイトの情報を基に分かりやすく解説します。
大前提:SFCに「専攻」はない。自ら専門性を創り出す学び
まず理解すべき最も重要なポイントは、SFCの学びの仕組みです。
大学の公式サイトに『「分野」とは学生や教員が所属する「専攻」「学科」「コース」ではありません』と明記されている通り、学生は入学時に固定された専門分野に所属するわけではありません。
SFCの学生は、両学部(総合政策学部・環境情報学部)に設置された無数の「研究プロジェクト」に自由に参加し、異なる分野の知識や技術を自ら組み合わせることで、一人ひとり独自の専門性を創り上げていきます。
つまり、SFCで空間デザインを学ぶとは、「空間デザイン」という名のコースを履修することではなく、建築、都市、情報、政策、文化など、空間に関連する多様なプロジェクトを横断しながら、自分だけの「空間デザイン学」を構築していくことを意味します。
4つのスケールで捉えるSFCの「環境デザイン」
SFCでは、空間に関する学問領域を「環境デザイン」という大きな枠組みで捉えています。これは、単に美しいモノをデザインするだけでなく、持続可能な未来社会を構築するための包括的なアプローチです。この「環境デザイン」は、扱う空間のスケール(規模)によって、大きく4つの分野に分けられています。
1. 建築環境デザイン (Architectural Environment Design)
スケール:建築
私たちの生活に最も身近な「建築」のスケールで、空間のデザイン、構造、生産手法などを実践的に探求する分野です。
- 学びのキーワード: 建築空間デザイン、構造デザイン、IT技術の応用、構築メソッド
- 特徴: 環境を意識しながら、実際に社会に通用する建築物をどう創り出すかを考えます。単なる意匠(見た目)だけでなく、その構造や建設プロセス、さらにはITを活用した新しいデザイン手法まで、幅広く実践的に学びます。
- 【重要】一級建築士への道: SFCの環境情報学部では、指定された科目を履修することで、卒業時に一級建築士試験の受験資格を得ることが可能です。これは、建築家を目指す学生にとって非常に重要なポイントです。
2. 都市環境デザイン (Urban Environment Design)
スケール:都市・まち
個々の建築物を超え、都市や地域というより大きなスケールで、豊かで安全な環境を創造・保全していく分野です。
- 学びのキーワード: まちづくり、地域再生、都市の歴史・文化、生態環境、防災システム
- 特徴: 都市の歴史や文化的な文脈を深く読み解きながら、ハード(インフラや建物)とソフト(コミュニティや文化活動)の両面からアプローチします。住民参加のまちづくりや、地域の資源を活かした再生計画、防災と一体化した都市システムのデザインなど、多角的な視点が求められます。
3. 地域環境デザイン (Regional Environment Design)
スケール:地域・フィールド
最先端の空間情報技術やデータ分析を駆使して、地域が抱える課題解決を支援する分野です。
- 学びのキーワード: リモートセンシング、IoT、地理情報システム(GIS)、気象・気候解析、データ分析
- 特徴: 人工衛星からの観測データや、地域に設置したセンサー(IoT)から得られる膨大な情報を科学的に分析し、災害リスクの高い地域の特定や、脱炭素社会に向けた効果的な地域計画などを支援します。テクノロジーを駆使して、持続可能な地域社会のデザインを支える「データ・エビデンスベース」のアプローチが中心です。
4. 地球環境デザイン (Global Environment Design)
スケール:地球
人類社会全体が直面する地球規模の課題に対し、技術革新や国際協調を通じて戦略的な解決策を構想する、最も大きなスケールのデザイン分野です。
- 学びのキーワード: 気候変動、持続可能な発展(SDGs)、災害リスク軽減、国際協調、戦略的ソリューション
- 特徴: ここで言う「デザイン」とは、物理的な空間設計に留まりません。気候変動に適応するための国際的なルールや社会システムを「デザイン」したり、SDGsを達成するための新しい技術やビジネスモデルを「デザイン」したりと、未来社会の仕組みそのものを構想・実践していきます。
SFCで「空間デザイン」を学ぶということ
ここまで見てきたように、SFCの空間デザインは非常に幅広く、そして自由です。学生は、自らの興味に応じて、これらの分野を自由自在に組み合わせることができます。
【SFCでの学びの例】
- 建築家 × 防災の専門家: 「建築環境デザイン」で建築士の基礎を学びつつ、「地域環境デザイン」でデータ分析技術を習得。科学的根拠に基づいた災害に強い建築・都市計画を研究する。
- まちづくりプランナー × 社会起業家: 「都市環境デザイン」でコミュニティデザインを学びながら、総合政策学部で社会起業や政策立案のプロジェクトに参加。地域を活性化する持続可能なビジネスモデルを創出する。
- 空間デザイナー × IT技術者: 「建築環境デザイン」で空間設計を学びつつ、メディアアートやインタラクションデザインのプロジェクトに参加。テクノロジーと融合した新しい空間体験をデザインする。
最後に
SFCにおける「空間デザイン」は、固定された専門分野ではなく、自らの問題意識に応じて、建築・都市・地域・地球という4つのスケールを自由に行き来しながら、未来の環境を創造していくための学際的なアプローチです。
建築士を目指す道が用意されている一方で、データサイエンティスト、まちづくりプランナー、政策立案者、社会起-業家など、従来の「建築家」「デザイナー」の枠を大きく超える多様な未来を描けるのが、SFCで空間デザインを学ぶ最大の魅力と言えるでしょう。
KOSSUN教育ラボは、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の総合型選抜(AO入試)に特化した対策を行っています。受験でお困りの方は、お気軽に無料個別相談会にお申し込みください。
※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人
西村 成道(にしむら・なるみち)
KOSSUN教育ラボ 副代表。総合型選抜(AO入試)のプロ講師として1,200名以上の塾生をサポート。特に書類選考の通過率は通算96.4%と業界トップを記録。慶應SFCをはじめ、「評定不良」「実績なし」「文章嫌い」からの逆転合格者を毎年輩出。圧倒的な指導力と実績が受験生、保護者の間で話題となり、全国から入塾希望者が殺到している。著書、メディア出演多数。